【坂村真民生誕百年記念祭に参加して】

五月十四日、奥島孝康高野連会長の就任祝いを大阪で催した折の事。

上甲正典済美高野球部監督から

「十月四日、時間を空けておくように。泊まりがけで来て下さい!」と云う。


‘坂村真民生誕百年記念祭’だと云う。


泊まりと云うのは、カラオケ好きの奥島会長、上甲監督、云わずもかな私を含むこの三人である。


十月四日、初日道後の花ゆずき温泉での会食。少しばかり焼酎が廻りかけた頃、砥部病院 中城院長が参加して来られた。話がどんどん弾み、中城院長と奥島会長は親戚同士であった事がわかった。

中城院長は、真民先生九十七歳の最後を看取った主治医であり、奥島会長

は、宇和島東高での初担任と云う奇縁である。この行事が無ければ、一生逢う事が無かったやも・・・。


坂村真民先生の“念ずれば花ひらく”の詩碑は、世界に七百基以上に及ぶ。砥部町の名誉町民でもある。

この記念祭のゲスト参加者は、石川洋氏(托鉢者)、鍵山秀三郎氏(イエローハット相談役)、加戸守行氏(愛媛県知事)、そして奥島孝康氏(高野連会長)と錚々たる人達その他多数。加戸知事は、“愛媛県産には愛がある”のPR書は“百億円”以上の効果を貰っていると仰った。奥島会長はよく坂村先生の家をたずねたが、お嬢さんが目当てだったとや・・・。“のんのさん”の呼称で呼んでいた。のんのさんとは田舎ことばの神様みたいと云うこと。石川洋氏は千年の石積みなる詩を多くの人々に導きを与え、京都の常勝寺に“念ずれば花ひらく”碑の第一号を建立した事をなつかしく思い出深く披露された。


真民さんは、森信三先生に詩人になることを勧められて、三度の訪問と出会いの中で、早く教師の職を辞めて、詩を書くよう進言を受けて、随分と悩んだと手記で読んだ。真民さんの詩は君が死んで五十年、百年経過して値打が出るだろうと云ったらしいが、何と生前に有名になられた。

詩国と云う詩集を発刊して、五百号以上を発表された。早朝一時、二時に起床されて重信川を散策することを死の直前まで実践されていた。砥部病院の院長は、入院された折、昼は起きて、夜お休みになるよう進言されたように伺った。師はお母様の背中をふる里にして、生命の輝きを発表していたとゲストのどなたかが云ってらした。ことばの炭鉱夫で、優しいことばで、詩を知らない人にもわかりやすい詩を、いろんな人々を励まし、勇気づける詩に、生命の輝きをよろこびの詩に書かれていた。


  大成とは一つの道を完成すること。

     “光らないものは、光を受けて光る”  

     “私は鳥になる。鳥には国境はない”

     “鳥は飛ばねばならぬ”

     “人は生きねばならぬ” 等々・・・。


真民さんは、“私は詩を作っても、詩人にはならない。”そして面白いと思ったのは、“老人は早起き”だと云うけれども、これは嘘だと仰っている。寝ていては光を灯すことも出来ない。創造する人間は絶えず、危機の中に身を置いていなくてはいけないとも・・・。大変に覚悟をもって人生を前向きに、外部から観た感じとは違った日常をおくられていたのだと想う。・・・これは御自分のことを云ったのだろう。・・・早朝の詩策もそのひとつ。


一道を行く者は、孤独だが、前からは引っ張ってくれる。後ろから押してくれる。天から見届けてくれている。だからひとりでも淋しくても、ただ黙々と歩く。

鈍刀は磨いて輝かずとも磨くことに意味がある。刀は鈍な刀でも、磨くとその人が変わる。それが努力と云うものだ。水だって止まると腐ると云い放つ。

花の咲かない木はない。すべての物は、生かされている。生かされているとは、天の心の花が咲いているのだ。


人間年によることの大切さがある。 年をとり人生が終わるのではない。 終りに近づいて、準備が始まる。 準備が出来るとは人生の始まり。 終わりから始まる人生がある。


私は病気をして人間になる。病気をして死と直面して人生の大切さを知る。死を意識することの意味を知り、機会を与えられた事に感謝する。


現実には区別、差別がある。 足の裏的人間たれ。汚れた場で区別されているようだが、足の裏がなければ、人間誰だって立つことも出来ない。その大切な役割があることを知って人生を歩もう!


人間は、死の着地点から、物事を考えると深い人生観に達するものだと説いた者がいたが、死とは不吉だと考えた。最も大事なのは、自覚、始めから自覚はなかったが、始めと終わりをみると、成る程。

死は、往生と書く。往生とは、彼岸の向岸で生きることである。葬式とは、始まりの日、輪廻転生を知る。

死は不吉ではない。人生とは面白い。だから何か次生に残ることを生きよう。人生とは面白いと知った。

“真民先生生誕百年祭”に招いてくれた、上甲正典氏に感謝を申し上げたい。  

                                     

                                       合掌

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